太陽のカケラ(15)
2010-09-01(Wed)
コン内官の報告によると、この劇場の支配人の父親は
王族会との交流のある人物だった。
ガイドとの兼務でソンイを直々に指名したらしい。
「どういうことだ。この件に関しては報告がなかった。
今後、気をつけるように」
「申し訳ありません、殿下」
「それと妃宮の様子も逐一報告を。
決して1人にはさせないように」
今日のチェギョンには乗馬のレッスンの後、
療養中のヒョン殿下と見舞いを兼ねて
映画鑑賞をしてもらうことになっている。
外部との接触はない。
だから心配することもないのだが、
あまりにもソンイの笑みに意味を感じ、シンは大事を取った。
「はじめまして殿下。ガイドをつとめるパクと申します。
本日はよろしくお願いいたします」
ガイドをつとめる中年の男性が現れると
報道陣からのフラッシュがたかれる。
「今日はお一人のご訪問になったはずだが・・・」
「あの女性は誰だ?」
シンの耳にもソンイの存在に気が付いた記者たちの声が聞こえる。
「報道の皆様、会見、撮影等は後ほど行いますので
しばらくこちらでお待ちください」
広報課の職員が報道陣を止めると、
シンはソンイを見ることなくガイドの案内で中へ進んだ。
*******
車寄せに着いたチェギョンは車の周りに集まっている
黒いスーツの集団に目を見開いた。
「何でこんなに護衛のみなさんがいるの!?」
「殿下のご指示です」
ちらりとその数に目をやると全員が一斉に礼をした。
「暑いのに本当にごめんなさい・・・」
チェギョンは10人ほどいる翊衛司に向かって
ぺこりと頭を下げると
せめてスーツは勘弁してやってくれとチェ尚宮に申し出た。
「まったくもう、心配性なんだからっ」
チェギョンは携帯電話を取り出すと
カタカタとシンにメールを打つ。
【件名】護衛
【本文】公務ではないのに多すぎよ。何かあったの?
チェギョンはため息をつきながら車のシートにもたれる。
街中へ出る坂の途中には太陽が降り注ぐひまわりが揺れていた。
季節を感じるこの宮の道がチェギョンは大好きだった。
歴史ある建物に、自然美がマッチし、心が洗われるようだ。
シンがこんなにも護衛をつけるということは
何か動きがあったのだろうか。
チェギョンは大きなつばの帽子を直しながら
不安に潰されないようにその景色に集中した。
「あんにょーん♪」
乗馬クラブのラウンジに行くとインとファンが
休憩を取っているところだった。
相変わらずソファに横になり夢の旅行を楽しんでいるファンと
音楽を聴きながら雑誌を読んでいた。
「チェギョン!」
インの声でファン夢から覚め、がばっと起き上がる。
「ひとりでレッスンか?」
「うん、最近なかなか来られなかったから、久々なんだ」
「俺たちも急に空きが出たとさっき連絡があったばかりなんだ。
ギョンも誘ったけど、ガンヒョンとデート中だった」
「あはは、ギョンが即答で断る様子が目に浮かぶわ。
じゃ、またあとでね!」
チェギョンは手を振るとインストラクターと
一緒にロッカールームへ消えて行った。
「チェギョン、皇太弟妃殿下になじんだな」
「ああ。すっかりそれっぽくなった」
「そういえば昔、ここでチェギョンを馬鹿にしたら、
シンに怒られたっけ」
「ハハ、あの時のシン、怖かったね」
無感情で無関心だと思っていたシンが
チェギョンと出会ってからは、感情をむき出しにすることも多くなり
付き合いの長い友人たちは戸惑ったものだ。
「行こうか。妃殿下の乗馬姿をそうそう見られる機会はないだろ?」
珍しくファンがインより先に立ち上がると、
インは笑ってその後を付いて行った。
*******
シンと結婚する前は、乗馬なんてものには
一生、縁がないものだと思っていた。
何のためにこんなことをするのかわからないお妃教育や
慣例行事はまだまだいっぱいあるけれど
乗馬はいい気分展開にもなったし、
数少ないシンとの共通の趣味が持てることが
チェギョンには嬉しかった。
「妃宮様、そのまま真っ直ぐお進みください」
「え、えーと、うわっ、あれ?」
おっかなびっくりに指示に従いながら馬をすすめるチェギョンには
まだまだ優雅さとは程遠い。
近くでそれを見ていたインとファンは
それをおもしろそうに見ていた。
「やっぱりチェギョンはチェギョンだな・・・」
「シンに送ってやろうぜ」
ファンはビデオカメラをまわし、
むしろ馬に操られているチェギョンを撮る。
そんなことは知らずにフラフラとレッスンを続けるチェギョンが
2人の近くに迫ってきた。
その時。
ヒヒヒヒヒーンッッ
あっという間の出来事だった。
穏やかなその馬が鳴き声をあげたかと思うと
チェギョンがバランスを崩す。
「ひゃ、ひゃああ・・・」
「危ないっ!!」
インが咄嗟に走り出し、
チェギョンが手を離し落馬したところを抱き留め、
しかりとキャッチした。
「キャーーーーッ!!!」
「妃宮様が落馬されました。担架を!」
乗馬場が騒がしく揺れる。
チェギョンを投げ落とした馬は興奮状態で、
係の者に取り押さえられていた。
「おい、チェギョン、大丈夫か?」
「だ、大丈夫・・・ナイスキャッチ、ありがとう・・・」
「焦った・・・近くにいてよかったよ」
インはチェギョンをゆっくりとおろし、
すぐに駆けつけた救護員にチェギョンを引き渡すと
まだ暴れている馬に目をやる。
「あの、担架とか大丈夫です。歩けますから」
「しかし・・・」
「それにしても、どうしちゃったんだろ。
いつもは優しくて賢い子なのよ」
チェギョンは担架を断るとゆっくりと立ち上がり、
インストラクターに尋ねる。
「妃宮様、申し訳ございませんっ」
「ううん、近くにインがいたなんて本当に私ってラッキー。
それより、あの子を叱らないでね」
チェギョンは心配そうに、強く抑えられている馬を見ながら呟く。
そして、大丈夫だからと騒ぐ声は無視されて
チェギョンは救護室へ運ばれて行った。
取り残されたインとファンはしばらくその場に立ち尽くす。
すると、ファンは思い出したように口を開いた。
「光・・・」
「え?」
「反射した光で馬が驚いたんだ。
鏡か何かが太陽の光を反射させたんだと思う」
ファンは撮影していたビデオカメラをインに見せる。
「まさか、チェギョンが狙われたってことか?」
「・・・可能性はある」
インとファンは光を飛ばしたと思われる客席に視線を送る。
当然、誰かがいる訳もなく、
誰もいなくなったそこで立ち尽くした。
「ここ最近、シンはやたらチェギョンを心配してた。
何かあるのかも・・・」
インは乗馬場をぐるっと見回しながら
予想もつかない展開が待っていそうな不安に胸を押さえた。

王族会との交流のある人物だった。
ガイドとの兼務でソンイを直々に指名したらしい。
「どういうことだ。この件に関しては報告がなかった。
今後、気をつけるように」
「申し訳ありません、殿下」
「それと妃宮の様子も逐一報告を。
決して1人にはさせないように」
今日のチェギョンには乗馬のレッスンの後、
療養中のヒョン殿下と見舞いを兼ねて
映画鑑賞をしてもらうことになっている。
外部との接触はない。
だから心配することもないのだが、
あまりにもソンイの笑みに意味を感じ、シンは大事を取った。
「はじめまして殿下。ガイドをつとめるパクと申します。
本日はよろしくお願いいたします」
ガイドをつとめる中年の男性が現れると
報道陣からのフラッシュがたかれる。
「今日はお一人のご訪問になったはずだが・・・」
「あの女性は誰だ?」
シンの耳にもソンイの存在に気が付いた記者たちの声が聞こえる。
「報道の皆様、会見、撮影等は後ほど行いますので
しばらくこちらでお待ちください」
広報課の職員が報道陣を止めると、
シンはソンイを見ることなくガイドの案内で中へ進んだ。
*******
車寄せに着いたチェギョンは車の周りに集まっている
黒いスーツの集団に目を見開いた。
「何でこんなに護衛のみなさんがいるの!?」
「殿下のご指示です」
ちらりとその数に目をやると全員が一斉に礼をした。
「暑いのに本当にごめんなさい・・・」
チェギョンは10人ほどいる翊衛司に向かって
ぺこりと頭を下げると
せめてスーツは勘弁してやってくれとチェ尚宮に申し出た。
「まったくもう、心配性なんだからっ」
チェギョンは携帯電話を取り出すと
カタカタとシンにメールを打つ。
【件名】護衛
【本文】公務ではないのに多すぎよ。何かあったの?
チェギョンはため息をつきながら車のシートにもたれる。
街中へ出る坂の途中には太陽が降り注ぐひまわりが揺れていた。
季節を感じるこの宮の道がチェギョンは大好きだった。
歴史ある建物に、自然美がマッチし、心が洗われるようだ。
シンがこんなにも護衛をつけるということは
何か動きがあったのだろうか。
チェギョンは大きなつばの帽子を直しながら
不安に潰されないようにその景色に集中した。
「あんにょーん♪」
乗馬クラブのラウンジに行くとインとファンが
休憩を取っているところだった。
相変わらずソファに横になり夢の旅行を楽しんでいるファンと
音楽を聴きながら雑誌を読んでいた。
「チェギョン!」
インの声でファン夢から覚め、がばっと起き上がる。
「ひとりでレッスンか?」
「うん、最近なかなか来られなかったから、久々なんだ」
「俺たちも急に空きが出たとさっき連絡があったばかりなんだ。
ギョンも誘ったけど、ガンヒョンとデート中だった」
「あはは、ギョンが即答で断る様子が目に浮かぶわ。
じゃ、またあとでね!」
チェギョンは手を振るとインストラクターと
一緒にロッカールームへ消えて行った。
「チェギョン、皇太弟妃殿下になじんだな」
「ああ。すっかりそれっぽくなった」
「そういえば昔、ここでチェギョンを馬鹿にしたら、
シンに怒られたっけ」
「ハハ、あの時のシン、怖かったね」
無感情で無関心だと思っていたシンが
チェギョンと出会ってからは、感情をむき出しにすることも多くなり
付き合いの長い友人たちは戸惑ったものだ。
「行こうか。妃殿下の乗馬姿をそうそう見られる機会はないだろ?」
珍しくファンがインより先に立ち上がると、
インは笑ってその後を付いて行った。
*******
シンと結婚する前は、乗馬なんてものには
一生、縁がないものだと思っていた。
何のためにこんなことをするのかわからないお妃教育や
慣例行事はまだまだいっぱいあるけれど
乗馬はいい気分展開にもなったし、
数少ないシンとの共通の趣味が持てることが
チェギョンには嬉しかった。
「妃宮様、そのまま真っ直ぐお進みください」
「え、えーと、うわっ、あれ?」
おっかなびっくりに指示に従いながら馬をすすめるチェギョンには
まだまだ優雅さとは程遠い。
近くでそれを見ていたインとファンは
それをおもしろそうに見ていた。
「やっぱりチェギョンはチェギョンだな・・・」
「シンに送ってやろうぜ」
ファンはビデオカメラをまわし、
むしろ馬に操られているチェギョンを撮る。
そんなことは知らずにフラフラとレッスンを続けるチェギョンが
2人の近くに迫ってきた。
その時。
ヒヒヒヒヒーンッッ
あっという間の出来事だった。
穏やかなその馬が鳴き声をあげたかと思うと
チェギョンがバランスを崩す。
「ひゃ、ひゃああ・・・」
「危ないっ!!」
インが咄嗟に走り出し、
チェギョンが手を離し落馬したところを抱き留め、
しかりとキャッチした。
「キャーーーーッ!!!」
「妃宮様が落馬されました。担架を!」
乗馬場が騒がしく揺れる。
チェギョンを投げ落とした馬は興奮状態で、
係の者に取り押さえられていた。
「おい、チェギョン、大丈夫か?」
「だ、大丈夫・・・ナイスキャッチ、ありがとう・・・」
「焦った・・・近くにいてよかったよ」
インはチェギョンをゆっくりとおろし、
すぐに駆けつけた救護員にチェギョンを引き渡すと
まだ暴れている馬に目をやる。
「あの、担架とか大丈夫です。歩けますから」
「しかし・・・」
「それにしても、どうしちゃったんだろ。
いつもは優しくて賢い子なのよ」
チェギョンは担架を断るとゆっくりと立ち上がり、
インストラクターに尋ねる。
「妃宮様、申し訳ございませんっ」
「ううん、近くにインがいたなんて本当に私ってラッキー。
それより、あの子を叱らないでね」
チェギョンは心配そうに、強く抑えられている馬を見ながら呟く。
そして、大丈夫だからと騒ぐ声は無視されて
チェギョンは救護室へ運ばれて行った。
取り残されたインとファンはしばらくその場に立ち尽くす。
すると、ファンは思い出したように口を開いた。
「光・・・」
「え?」
「反射した光で馬が驚いたんだ。
鏡か何かが太陽の光を反射させたんだと思う」
ファンは撮影していたビデオカメラをインに見せる。
「まさか、チェギョンが狙われたってことか?」
「・・・可能性はある」
インとファンは光を飛ばしたと思われる客席に視線を送る。
当然、誰かがいる訳もなく、
誰もいなくなったそこで立ち尽くした。
「ここ最近、シンはやたらチェギョンを心配してた。
何かあるのかも・・・」
インは乗馬場をぐるっと見回しながら
予想もつかない展開が待っていそうな不安に胸を押さえた。


さっすが!!役に立つときがくるかも!!


