【緊急募集】別室:ムクゲちゃんねるのお知らせ
こんにちは。
「妄想の間」を借りて、別ブログのお話をさせていただきます。
この記事は5月17日までの限定記事です。
時間を過ぎると削除いたします。

このたび、小パンダの中の人のお誕生日を記念して
劇団kahoの創作ドラマ「ムクゲちゃんねる」のご案内をいたします。

「ムクゲちゃんねる(以下:ムちゃん)は、1年少し前、
私のもうひとつのブログ、「ときめきは乙女を救う」で5日間限定で
お知らせした秘密ブログです。
現在、パスワード制で放送しており、申請のない方は入ることができません。
運営は私kahoと、実の姉のような容姿と性格の姉で結成した165姉妹が
行っております。

この小説は韓流ドラマでおなじみの「ベタ」「お約束」「人気作品をインスパイア」・・・
の三本柱で成り立っており、165姉妹の日々のおバカなやり取りが垣間見えるような
自己満足ならぬ姉妹満足なお話です。
(公開するなど微塵も思っていませんでしたので…)

そして、私たちはチェギョンの中のヒト(以下、姫)至上主義です。
姫が大好きで、シンくんの中の人(以下、小パンダ)と姫の
明るい未来を信じて疑っていない方には、
すんなりと受け入れていただけるかと思いますが、
小パンダが誰よりも大好きで、「小パンダは超素敵じゃなきゃ!」という方と、
「それ、パクってるんじゃありませんか?」と手厳しい風紀委員のような方には
決して決してお勧めできません。

また、ドラマの中にはこの2人以外の俳優さんにも出演いただいています。
「ちょっと、私の○○さんにこんな役をさせないでよっ」という苦情も
受け付けられません。

以上の点をクリアされた方は以下の通り申請をお願いします。
折り返し、165姉妹から返信メールを送らせていただきます。

*本当に読者を選ぶような内容でもありますので、
 登録の際は本当にお気をつけくださいね。

(1)この記事のコメント欄の165姉妹をクリック
(2)こちらのメールアドレスに
 ・ご自身お名前(ハンドルネーム、本名でなくてOKです)
 ・メールアドレス(PCからのメールが受信できるもの)
 ・姫と小パンダのカップルを信じているメッセージ
 を記入の上、メール送信
(3)165姉妹からパスワードを返送。
  ムちゃんへパスワードで入室。

登録は上記の方法のみで行っております。
「妄想の間」「ときめきは乙女を救う」では行っていませんので
ご注意ください。

また、メール設定等は個人の機種に準じているものなので
「メールが届かない」「どういう設定にしたら見られるのか?」等の
ご質問には残念ながら答えられません。
どうぞご理解くださいませ。

参考までに・・・現在以下2本を放送中☆

●「俺たちの明日はどっちだ」(完結)
お兄ちゃん(シークレットガーデンで活躍した中の人。以下お兄ちゃん)と
小僧(小パンダ)はイケメンお笑いコンビ「Grace」を結成。
まったく売れない貧乏生活を送る中、
お兄ちゃんの妹・姫(姫)が突然お兄ちゃんのもとにやってきた。
姫はお兄ちゃんの相方・小僧に恋をするがシスコンの兄には絶対内緒。
この恋は成就するのか、そしてGraceの運命は!?
出演は3人のほか、アンナ(ファンタスティックカップルの中の人)、
ケ(タルジャの春・テボンの中の人。以下:小わんこ)、
ペーター(コーヒープリンスのワッフル王子の中の人:以下赤ネコ)など。

●「夜皇帝」
ホストクラブ「Grace」は大人の社交場をテーマとし、連日大賑わい。
ナンバーワンのケ(小わんこ)はホストらしからぬ商売気のない
優しい好青年だ。
そんな店に突然現れたルーキーホストの小僧(小パンダ)は
ケとは対照的な方法で客から金を巻き上げる冷めた男。
愛など信じない小僧は店の中でも浮いた存在だった。
そんな小僧は帰宅途中、牛乳配達のお節介娘・姫(姫)に出会う。
酒屋で兄(お兄ちゃん)と暮らす姫は失礼な小僧の態度に憤慨するが・・・。


こんな感じで、シンチェでもなければリアルでもない
そんな劇団のドラマですがご興味がある方はいらっしゃいますか?


ときめきは乙女を救ってくれますが、
笑顔は日本を必ずや救ってくれるはずです。

そんな想いをこめて開局したムクゲちゃんねるへの
お越しをお待ちしております。


165姉妹・妹 kaho

君影草(19)
楽な交通手段しか用いない軟弱な足腰であろうとも
成人男子の歩行に勝てるわけなどなかった。

逃げることを諦めて足を止めると
背後の足音もぴたりと止まる。


「・・・あのさ」


良い具合に人もいなくなったところで
ガンヒョンは後ろを振り返った。


「私たち、別れたんだけど」


角帽を取りながら頭を振ると
髪がさらさらと風になびいた。


「そういう話もあったね」


ガンヒョンの言葉にギョンは動揺することもなく
ヘラヘラと笑ってみせる。


「笑い事じゃないでしょ?私は真剣に言ったのよ!」


「わかってるよ」


「ぜんぜんわかってないじゃない。
何なのこの真似は!」



顔を見るのもつらくてたまらなかったというのに
ついギョンのペースに巻き込まれてしまう。
ガンヒョンは苛立ちながら声を荒げる。


「だから、もう一度言うよ」


ギョンは1歩近づき、ガンヒョンの目をじっと見つめた。


「俺はガンヒョンが好きだ。
顔を見るのも嫌だと言われても、
諦めようと努力しても、やっぱり好きなんだ」


大きな手がガンヒョンの肩に置かれる。
言い返すなら今なのに、
ガンヒョンは何も言わずに言葉の続きを待った。


「これからも追いかけるよ・・・
通報されない程度にね」


将来の不安とか、ギョンの会社のこととか
頭の中をいろんなことが過ぎ去っていたけれど。

置かれた手が暖かくて
振りほどくことを忘れてしまった。


「・・・本当は本物が欲しかったんだけど、
どこにも売ってなくて。今はこれで勘弁して」


何も言えず俯いたままのガンヒョンの肩から
ギョンはそっと手を外し、
コートのポケットから小箱を出した。


「あけて?」


躊躇しているガンヒョンの手からギョンは
それを取り上げると開いてそれを見せる。


「・・・香水?」


「そう。すずらんの香り」


「どうして、すずらん・・・」



感情がコントロールできなくなったガンヒョンは
ただ思いついた言葉だけをポツリと言う。

ギョンは大きく深呼吸をすると、
少しだけ緊張した面持ちで言った。


「・・・あれから考えたんだ。
ガンヒョンを不安にさせたこと、心配に思わせていること、
全部ひっくるめて出した答えだ」


ギョンはいつも笑っている。
ずっとそれに支えられたこと。
変わらない何かを作り出してくれたことを
ガンヒョンはふと思い出した。


「ずっと不自由させない生活を約束する。
欲しいものがあったらそれを与えたいし、
言いたいことがあったらどんなことでも受け止めてあげる」


小瓶をぎゅっと握り締めるその手に
ギョンは自分のそれをそっと重ねる。


「だけど俺からもお願いがあるんだ。
もしも、俺がダメになったら
今度はガンヒョンが支えてほしい。
もちろん、俺も本気で働くつもりだ。
今までのようにしょっちゅう会えないけど
一生懸命がんばるよ。
それに・・・俺には待っているだけの女性はいらないんだ。
だからガンヒョンにも頑張ってほしい。
周りが何と言おうと言い返せるほどの誇り高い教師になってほしい」


写真を撮るからいつもより濃いめにメイクをしたのに。

ギョンの言葉でそんなことはすっかり忘れてしまった。
何度も何粒も目から涙が滑り落ちる。



「俺、まだ何もできないのにこの前のプロポーズは早まったな。
だから、2人がそうしようって思う時に結婚しよう。
それまでは諦めないで一緒に頑張ろう」


下を見続けるのは涙が止まらないからだけじゃない。
顔をあげたらどうなるのかわからなかっただけだ。


「・・・ガンヒョン?」


少し不安を帯びた声で名前を呼ばれる。
それを打ち消すようにガンヒョンは顔をあげた。


どんな言葉よりもギョンが元気になるのは
ガンヒョンの笑顔だから。


「・・・あんたを養うことになったら
贅沢なんかさせないんだからね」



威力のないパンチをギョンの腹部に押し付けると
視線をあげた。



「この間の言葉・・・許してくれる?」



ぐちゃぐちゃの顔を出来る限り隠すように
ガンヒョンは微笑んだ。

じっと自分を見上げるその目に
ギョンはたまらず体を引き寄せる。



「当たり前だろ。
もう二度とおかしなこと言うなよ!」



押し付けられたギョンのコートは
やっぱり上質で心地がいい。
不安が消える訳ではないけれど
この温かさにもう少しだけ向き合おうと
ガンヒョンは思った。


「ちょっと・・・もうそろそろ離して?」


「いやだ」


「こんな外でやめてよ。人が来るわ」


嬉しいはずなのに、すぐに冷静さを取り戻すのは
きっと直らないくせだ。
ガンヒョンはその腕から逃れようと
ギョンの体を押し返すもそれはいとも簡単に
拒絶された。


「久しぶりに触れられるのにガマンできるか」


「ちょっと・・・」


さらに強く抱きしめられると
ガンヒョンは無駄な抵抗をやめる。

この人の純粋な愛を受け入れるために
降参しようと思った。


「ところで・・・すずらんって何で?」


ゆっくりと体が開放され、
ほてった顔を隠すようにガンヒョンが訊く。


「ああ・・・仕事でフランスについて調べたんだ。
知ってる?フランスでは結婚式に
夫が妻にすずらんを贈る風習があるんだって!」


握りつぶされそうな小箱に触れながら
ギョンは笑った。


「結婚式・・・」


「そう。だからここはすずらんの鉢植えを贈ったら
完璧じゃないか!・・・って、思ったのに
卒業式シーズンだから、どこの花屋も派手な花束ばかりで・・・」


「バカ・・・」



いつ誰がここに来るかわからないのに
ガンヒョンはギョンの背中に腕をまわした。

こんな人を手放そうだなんて、どうかしてた。
その言葉は自分に向けての言葉だ。


「すずらんって花がうつむいているように見えるだろ?
だから“君を想う花”って言われるんだって」


“俺、なかなかのロマンチストだろ?”
ギョンはそう笑うと飛び込んできた宝物を
優しく包み直す。


「花言葉は『意識しない美しさ』『純粋』」
・・・まるでガンヒョンだ」


少しだけ顔を離すと目をぱちくりと輝かせた
ガンヒョンと目があう。
やっと見つけた幸せな口元に
ギョンは軽く自分のそれを合わせた。


「あ、あと『幸福が戻ってくる』
・・・っていうのもあったな。俺の元にやっと戻ってきた」


どこまでも幸せそうに笑うギョンに
ガンヒョンは小さく笑う。
それでもやっぱり恥ずかしくて俯きながら呟いた。


「でも、すずらんって“毒草”よ?」


世界一幸せなんじゃないかと頬を緩ませたギョンの顔が
一瞬で固まる。

そんな顔がおかしくてガンヒョンは噴き出した。


「そ、そうだよっ。かわいい花のくせに毒・・・
あああっ、だったら解毒だ、解毒だーー」


ムキになって唇を奪おうとするギョンから
ガンヒョンはひょいと身をかわすと
笑いを堪えながらスタスタと歩き出す。


「おい、どこ行くんだ。待ってよ」


どんなに離れても彼は追いかけてくれる。

そんな奇跡に感謝をしながら ―

ガンヒョンは困り顔のギョンに手を差し出した。




*******



荷物を置いたままだったと、
ガンヒョンはひとり教室に戻る。

プレゼントされた香水の小瓶をこっそりプッシュしてみる。
香りをつけることは得意ではなかったけど
甘くて控えめな香りが今は心地よかった。

バッグの上には「先に帰るね」と書かれた
チェギョンからの手紙が置いてあった。


式に両親が来ているとギョンに告げると
ギョンは張り切って「ご挨拶がしたい!」と言う。
両親に電話をすると、父の声が嬉しそうに感じられた。


外で待たせているギョンに急いでそれを伝えようと
廊下に飛び出すと歩いていた学生にぶつかりそうになる。
こんなに落ち着きがないなんて自分も相当舞い上がっているのだと
頭を下げ顔をあげて目が点になった。


「ガンヒョンさん」


頭の先から足の先まで彼女は美しかった。
走ったり泣いたり忙しかった自分の顔は
それは相当ひどいものだから、ガンヒョンは恥ずかしさで
隠れたい気持ちになった。


「ユリさん・・・」


何と言葉をかけたらいいのかも見つからず
ただ相手の名前を呟くだけのガンヒョンに
ユリは鋭い視線を送った。


「この前も言ったけど・・・
ギョンさんを私に譲ってよ」


にこりともせず吸い込まれそうな目で
挑むユリにガンヒョンは一瞬躊躇する。

それでも、今度は目を逸らすことはしなかった。


「嫌よ。断るわ」


きっぱりと言い放つガンヒョンにユリの表情が固まる。


「譲る気はない。ごめんなさい」


ポケットの中の香水を握り締め
ガンヒョンはそう言うと、ユリの横を通りすぎた。


「ガンヒョンさん!」


階段を下りようとしたその時、
ユリが再び引き止める。
振り返ると、初めて会った日と同じ顔で
彼女が佇んでいた。


「私なんか比べ物にならないくらい意地悪な女が
あの世界にはいっぱいいるんだから!
あなた負けない自信あるの?」


イマドキ娘で、不躾な彼女が
そんなに嫌いじゃない理由が今なんとなくわかった。

ガンヒョンは大きく頷くと
大きな声で答える。


「望むところよ。
あいつの相手をするなら、それくらいの覚悟でいなきゃ」


弾けるような笑顔で答えたガンヒョンに
ユリは小さく頷き、微笑んだ。



*******



携帯電話の画面を見ながら
チェギョンがだらしのない顔をする。


「よかったねー、ガンヒョンとギョン」


「大変なのはこれからだ」


「もうーっ。とりあえずは良かったんだから
いいじゃないっ」


まるで自分のことのように
ニマニマと笑うチェギョンとは対照的に
シンはあくまでクールなままで車を降りた。


卒業式であろうと宮に入ってしまえば関係はないようで、
シンは待っていたコン内官から早速執務の連絡事項に
余念がない。


「つまんないのっ。
卒業式にあんなことが起きるなんて超素敵なのにっ!」



自分を置いてさっさと消えてしまったシンに
チェギョンは大きく頬を膨らますと
プリプリと怒りながら自室へ向かった。


「いいなー、ガンヒョンは。
私も少しくらいはロマンチックな卒業式にしたかったよ」


部屋に戻り、不満をぶちまけるように
ソファにどんとダイブする。
それでもシンの性格からして、
自分の理想のシチュエーションなど
起きるわけがないと、むくりと起き上がった。


「・・・着替えよ」


ため息まじりにひとり呟くとクローゼットに向かった。
浮かれていても仕方ない。
1時間後には式典の打ち合わせというスケジュールが
自分にも待っているからだ。

一気に現実に引き戻されたチェギョンが
クローゼットの扉を開ける。
そして目の前に飛び込んできたものに不思議な眩暈がおき、
また扉を閉めた。


「・・・私、疲れてるのかな?幻覚が見えた・・・」


チェギョンは大きく深呼吸をしてゆっくりと扉を開ける。
そして幻ではないそれをゆっくりと取り上げた。


クローゼットで待っていたアルフレッドの手には
ピンクを基調とした花束が添えてある。


小さなカードを開き
チェギョンは感激で瞳を揺らした。




「・・・やられた」





“4年間よくがんばったな。卒業おめでとう”





ぶっきらぼうなその字があまりにも愛しくて。


チェギョンはアルフレッドをぎゅっと抱きしめた。





kimikagesou.jpg







<おわり>





:::あとがき:::

長期間の連載にお付き合いをいただき
本当に本当にありがとうございました。
予定では2月下旬に終わるはずだったのに
気が付けばこんな時期になってしまったこと、
自分の計画性のなさにひれ伏して謝罪いたします。

ガンヒョンとギョンの話は
ずっと前から書こうと思っていました。
この2人の今後はどうなるのかはわかりませんが
「一緒に頑張ってみよう」という答えは必ずや
人生のプラスになると思います。
がんばってほしいものですね。

私のお話にはよく花言葉関係が出てくるのですが
今回はガンヒョンによく似た「すずらん」です。
タイトルの「君影草」はすずらんの別名。
ひかえめだけど、毒がある!・・・っていうこの花を見ていたら
お話が浮かんだというわけです。

卒業式も終え、いよいよシンチェも
大きな舞台が迫ってきました。
この2人の未来もまた楽しみであったりします。

実は次回のお話は4月くらいにスタートして
さくっと終える予定でした。
(とある計画があったのです)
この話が時間がかかってしまったので
まだまったく手をつけていないのですが
早々に書き上げられたらと思っています。
その時はまたお付き合いくださいね。


みなさまにも素敵なときめきが訪れますようにxxx


kaho









君影草(18)
数日前。
ギョンは自宅で寛ぐ父に声をかけた。


「父さん、今いいですか?」


新聞に手をかけていた父は息子の姿を確認すると
そっと眼鏡をはずし、テーブルに置く。


「座りなさい」


几帳面に新聞を畳み、脇に置く。
そんなところは自分とあまり似ていないと
ギョンは思った。


「以前、話をした件です。
ユリさんとは結婚できません」


どんな言葉を並べても父には敵わない。
だからギョンはあえて唐突に話を切り出した。


「・・・それで?」


予測の範囲だと言わんばかりに
父は表情を変えることなく言葉を続ける。


「仕事も諦めません。まだ何かができるわけじゃないけど・・・
でもこの世界の仕事が好きなんです」


目を逸らしては負けだとギョンは思う。
何をしても飽きっぽい自分が夢中になれるたことだ。
諦めることなどできない。


「大きな後ろ盾が必要であることは理解しているのに?」


「勿論です。
でも後ろ盾は資金だけではないはず」


力強くその言葉を言う息子に父は驚きを隠せなかった。


「どういうことだ?」


「俺はまだまだ未熟な人間だ。父さんがいるうちはいい。
でもこのまま会社を継いだらどうなる?
ライバル会社にあっという間にのっとられる」


それはそれは真面目な表情でギョンは言ってのける。



「おまえは何を言ってるんだ・・・情けない」


「だから仕事のことはもっと父さんから教わりたいんだ。
もっと本気で・・・社長の息子だからとかそういうことではなくて」


呆れた表情の父の顔は少しずつ変わった。
そういえばこんな話をしたことは
今までに一度もなかった気がする。


「俺がしっかりすれば、こんな形を取らなくとも
会社は必ず守っていけます。
けれど今までぬるま湯で育ってきたから、
今の俺は使い物にならない。
だから父さんの力が必要なんだ。本気で頑張るから・・・」


「・・・彼女はどんな仕事を?」


必死で頼み込む息子に父はゆっくりとした口調で訊く。


「え?」


「おまえにそこまで言わせる女性はどんな人なんだ」


緊張で汗ばんだ手の平をギョンは一層強く握る。


「卒業したら芸術高校の教師になります」


柱の時計が時刻を告げた。
沈黙が続き、父は両手を握る。


「それと・・・それに何がある?」


鋭い目を向けられたものの
ギョンはそれに逸らすことなくはっきりと答えた。


「俺を教育してくれます。
甘やかさずに、はっきり言ってくれる人なんだ。
彼女となら頑張れる。
今すぐ父さんの了解をもらえるなんて思ってないけれど・・・
結果を出すことを約束するから」



“ぼく大きくなったら父さんの会社でおしごとするよ”

“ギョンは飛行機が好きか?”

“飛行機も好きだけど、
お仕事してる父さんがかっこいいんだもん”



ずっとずっと昔に小さなギョンはそう答えた。
息子に尊敬されるよう頑張ろうと、小さな体を抱きしめながら
そう思ったのだ。


「なあ、ギョン。どうしてこの仕事をしたい?」


どうしてだか、知りたくなった。
ギョンは目をぱちくりさせながら、
何の計算もなく答える。


「父さんみたいになりたい。飛行機も好きだし」


いい加減で将来が心配だった息子の武器はこれだろう。
父は小さく笑って確信した。


「相当な“ジジ殺し”だな。
まあ、若いおまえがやっていくには必要なものだ」


「なんですか・・・それ」


「彼女も一度連れてきなさい。
教師になれるなら学もある女性なのだろう」


父はキョトン顔の息子の顔に再び不安をかられながらも
新聞を広げ直した。


「本当?彼女は真面目で賢くって・・・
本人は気づいてないけど、すっごい美人なんだ!!」


「・・・そんなことは聞いていない」


「父さん、ありがとう。俺マジでがんばるから!!」


ギョンは立ち上がるとガッツポーズを隠すことなく
喜びを全身で表しながら階段を昇って行った。
性格は似ていないはずだが、単純なところは自分に似たのだと
父は心から苦笑いをした。



*******


人文学部はほとんどが女子学生なので
ギョンはあまりにも目立っていた。
ガンヒョンはあまりの展開に引きつった笑みを浮かべる。


「うわー。黒ガウンがまた色っぽいじゃないか!
同じ服を着ていてもここだけは輝きが違うから
どこにいるかすぐにわかったよ」


正面に向かいあうなり歯の浮いたようなセリフを
ペラペラ言うギョンにガンヒョンはただ眉をひそめる。


「何なんのよ。もうあんたは関係ないでしょ?」


「角帽に黒ガウン・・・このスタイルでそんなこと言われると
かなりしびれるんだけど?」


「は!?」


「あ、チェギョン。ガンヒョンの次に似合ってるよ」


もののついで、と言った社交辞令ありありの笑みで
ギョンがチェギョンに顔を向ける。

どこをどう切り取ってもこの男はギョンだ。

チェギョンはじろりとギョンの顔を睨むものの
胸の奥が軽くなるのを感じた。


「行こう」


卒業証書を握る反対側の手を引き、
ギョンはガンヒョンを連れ出そうとする。


「ちょっと、勝手なことしないで!」


「だって、ここであれこれ話したらみんなに聞かれるよ?
ガンヒョン、そういうの苦手じゃないか」


ガンヒョンがひらりと振り返ると、
突然の有名御曹司の登場に色めきたつ女子学生の山ができていた。
皆、関心が深いようでジロジロとガンヒョンを眺めている。


「・・・ああ、もうっ」


恥ずかしくてここに立っているのも嫌だ!、と
ガンヒョンは人ごみを避けるように走り出した。


「おい、待て。待ってくれよー」


逃げるように走り出したガンヒョンを
ギョンは追いかける。

きっと1分もしないうちに
ガンヒョンはギョンに捕まるだろう。


「本当にギョンはしつこいんだから」


消えていく背中を眺めながら
チェギョンは幸せそうに笑った。













君影草(17)
式では別の席にいたから顔を合わせることもなかったし、
インやファンでさえも朝からその姿を見ていないと
首をかしげていた。

携帯電話も繋がらない。

これから頻繁に会うこともできなくなるというのに
何をしているんだ、とシンは焦っていた。


「ガンヒョンにフラれたっていうから
モデルとの合コンをセッティングしてやったのに、
ぜーんぜん興味示さないんだよね」


ファンはビデオカメラを編集しながら
つまらなそうに言う。


「あのお見合い相手のギャルとも
付き合ってる様子はないしな」


インはテーブルに肘をつきながら
何度もリダイヤルボタンを押し続けた。


「最後まで落ち着かない男だ」


シンは呆れた様子で震えたディスプレイを見る。


“ガンヒョンはまだ一緒にいるから
ギョンを見つけたら連絡してね”


卒業アルバムの写真撮影があるらしく
チェギョンの学部は講堂へ移動しているらしい。


「俺、ギョンには
ガンヒョンしかいないと思うんだけどね」


ファンが呟いた。


「あんな訳わからん奴、操縦できるのは
彼女ぐらいだろ?」


インもその言葉に同調する。


ありえない組み合わせで始まった2人に
信頼が生まれたのはいつの頃か。

ぼんやりとその頃を思っていると
廊下が騒がしくなってきた。
シンの姿を発見した学生たちが
一斉に教室に押し寄せてきたのだろう。


「場所移動しないとやばいかな」


「ああ悪い」


「慣れたもんさ、気にするな」


3人が一斉に立ち上がると勢いよく扉が開いた。


「いたいた!
やっぱり“人が集まる場所にイ・シンあり”だな!!」


扉を閉めながら、一人納得した様子でギョンが笑う。


「おい、今までどこに行ってたんだよ」


こちらの心配をよそに
相変わらずヘラヘラと笑っているギョンに
インは呆れた声を出す。


「ちょっと買い物に」


「買い物?卒業式に?」


「探していたものが見つからなかったんだよ。
それより、ガンヒョンはどこだ?」


「は???」



突然やってきて、突然予想外のことを言うギョンに
3人には顔を見合わせる。


「さっきから探してるんだけど、見つからないんだ。
これだけ大勢の人がいても輝いてる白鳥は
すぐに見つかるはずなんだけどなあ」


別れたことなど、まるでなかったかのように
ギョンはキョロキョロと窓の外を見つめる。


「あいつ・・・
ショックのあまりにおかしくなったのか?」


窓を縦横無尽に動くギョンを眺めながら
インは顔を引きつらせる。


「おい、大丈夫か?」


「何が?」


ファンからの問いにギョンはハテナ顔で振り向く。


「ガンヒョンを見つけてどうするっていうんだよ。
もう終わったんだろ?」


「そうだよ。しつこいのは惨めだぞ」


現実をつきつけるようにインが言い放ち、
それに賛同するようにファンが頷く。

しかしそんな言葉に怯むことなく
ギョンは人差し指を立て、呆れた顔を見せた。


「・・・おまえらガキだな」


まるで西洋人がそうするように
ギョンは手のひらを天に向け首を振ると
机の上にひょいと腰掛ける。


「は?」


その言葉に呆気に取られるインとファンを通りすぎ
シンの前に立ったギョンはにんまりと笑う。


「チェギョンの居場所は?」


「・・・機密情報だ」


「おい、チェギョンは国母になるんだろ?
俺、国民だぜ?ってことはチェギョンは母も同然。
息子が母の居場所を知ろうとしてなぜ悪い」


意味不明の解釈をペラペラと話し続けるギョンに
シンはフッと笑みを零すと、携帯電話を覗き込む。


「おまえが知りたいのは“妃宮”の
居場所じゃないだろう」


「正確に言えばそうだけど、
そこにはガンヒョンもいるだろ?」


早く教えろと画面を覗き込もうとするギョンの背中を
シンは軽く叩く。


「講堂でアルバムの撮影中だ。
あいつはその後、宮の者が迎えに来るから
早く行った方がいいんじゃないか」


「サンキュ!!」


ギョンは顔をぱあっと輝かせると、
急いで扉に向かった。


「あ、そうだ」


扉に手をかけたギョンは振り返ってシンを見る。


「シン、今日は卒業式だぜ?
チェギョンに花束のひとつでも渡さないと
男が廃るんじゃないか?」


じゃ!と手で小さなハートマークをシンに掲げたギョンは
猛スピードで廊下を走っていく。

長身の男が教室を出たことで、
シンと勘違いした女子学生からはどっと歓声があがったものの、
しばらくすると「なんだ違うじゃない」とがっかりした声が漏れた。


「なん何だよ、あいつ」


「さっぱりわからない」


まるで嵐のようにギョンが消え去った教室で
呆然とする2人とは対照的に
シンはギョンの行動に何かを確信したように笑っていた。



*******



撮影が終わる頃、チェギョンの携帯が震えた。
ギョンがこちらに向かっている、との情報に
チェギョンは思わず顔を綻ばせる。


「チェギョン、もうお迎えが来るんじゃない?」


「う、ううん。なんか遅れてるみたいなの!
こっちで写真撮ろうよ!」


チェギョンはガンヒョンの腕を取ると
まだ寒い中庭へ連れ込む。


「さんざん撮ったじゃない」


「携帯で撮ってないもん。
スン姉妹にも送ろうよ!」


苦しい言い訳をしながらチェギョンは必死で
ガンヒョンを繋ぎとめた。

少し強引なチェギョンに
ガンヒョンは一瞬戸惑いを覚えたものの、
こうして一緒に過ごせる時間が本当は嬉しかった。

国母になろうが何になろうがチェギョンはチェギョン。
そう、さっき自分がそう思ったように・・・


「いた、いた。ガンヒョーーーーーーン!!!」



背中から素っ頓狂な声が聞こえてきた。

空耳?
頭を振ってリセットするものの
どうやらそれは本物らしい。


息を切らして駆け寄ってきたのは
決して幻じゃない、会いたかったギョンだった。









君影草(16)
ソウルの空は久々に晴れやかなものだった。

早朝から学校の周りには多くの報道陣と
追っかけの女性たちがガヤガヤと騒いでいる。

今日は大学の卒業式。

多くのテレビカメラが押し合うようにその道を塞ぐ。
どのメディアも、皇太弟夫妻の姿を画像に収めるために
必死で取材しているのだ。


いつもの何倍も多い人の山にガンヒョンはうんざりした。


「来なくてよかったのに」


「何言ってるの。
親戚の中でもあなたは出世頭なんだから!」


卒業式には何がなんでも参加すると
ガンヒョンの両親は朝から張り切っていた。
この眩暈するほどの人ごみも
母には興奮の材料になっているらしく
すでにシャッターは何度も切られている。


「私、裏道から行くから、会場でね」


「わかったわ。気をつけて」


懐かしむ気さえおきないフィーバーっぷりに
ガンヒョンは深くため息をつくと
母から荷物を受け取った。


「・・・ところで、あの青年はどうしてる?」


じゃあ、と一歩進みかけた時に、
ずっと黙ったままだった父が呟いた。


「ちょっとあなた・・・」


動揺する母が視界に入ったものの
ガンヒョンは即座に言い返すこともできず
ただ父から視線をそらす。


「・・・どうしたも何も関係ないわ」


当然のことながら今日まで連絡は一切ない。
それが自分の希望であったのだから
後悔などしてはいないのだけれど、
「関係ない」という自分の言葉になぜか痛みを感じた。


「なかなかおもしろい青年じゃないか」


ガンヒョンの言葉をどう感じているのか、
父は増えていく人の山の中で続ける。


「・・・彼とは住む世界が違うの。
パパだって知ってるでしょ?彼は・・・」


「おまえは人を差別するのか?」


耳障りな騒音をBGMに
父は不思議そうに訊いた。


「え?」


「おまえは教師になるんだろう?
貧しく育った生徒と裕福に育った生徒に違った教育を?」


「そんなことするわけないじゃない!」


「いや、おまえの言っていることはそれと一緒だ」


興奮気味に言い返したガンヒョンに
父はトーンを変えずに答える。


「被害者ぶるな。
彼がいつおまえを・・・私たち家族を差別した?」


「パパ・・・」


「屋台で果物を買うことも、満員のバスに揺られることも、
素朴なチゲを狭いテーブルで食べることも・・・
きっと彼には初めてだったはずだ。
夕食には私が無理やり誘った。
歩み寄ろうと努力する彼におまえは何をした?」


言い返す言葉はなかった。

父が夕食に誘ったことも知らずに
ギョンを追い返したこと。
さらに取り返しのつかない言葉で傷つけたこと。

彼のためだとカッコつけて、
歩み寄りもせずに住む世界が違うと、
ひとり拗ねていたこと。


「こんな教師に教わる生徒は気の毒だな。
さ、母さん行こう」


言葉なく立ち尽くすガンヒョンを置いて
父は人ごみを掻き分けてさっさと会場へ進んで行った。
オロオロと2人を見ながら母が父の背中を追う。


その通りだ、ガンヒョンは思った。

勝手にひがんで。
勝手にいい女ぶって。
勝手に傷つけた。


「ガンヒョン、おはよう!」


クラスメートが背中をたたく。


「おはよう・・・」


「こっちは混んでるから、裏から行こう?」


「う、うん」


今日が終われば偶然にさえ会えなくなる。

胸騒ぎがして、あたりを見渡したものの
彼の姿があるわけはなく、ガンヒョンはただ空を見上げた。



*******



「ガンヒョーーン、こっちでも写真撮ろうっ」


構内のあちこちでチェギョンはガンヒョンを誘った。


「・・・宮専属のカメラマンさんでしょ?いいの?」


「だって私が撮るって言ってもついてくるんだもの」


「ガンヒョン様、お付き合いお願いします」


チェギョンの撮影がおもしろくてたまらないといった様子で
カメラマンが微笑むと、
チェギョンは「早くー」とガンヒョンを催促する。


「皇子は?」


「あー、なんか偉い先生に呼ばれて
ずっと出てこないよ」


ピースサインをしながら答えるチェギョンは
高校生の頃と変わらないように思えて、
ガンヒョンは小さく笑う。


窓の下からは時折、歓声が聞こえる。
体育会系のメンバーによる胴上げや
憧れの先輩に告白しようとする女子学生。
卒業式にはドラマが似合うと
ガンヒョンは他人事のように思う。


「ギョンには会わなくていいの?」


派手な花束を持つ学生カップルを見ながら
チェギョンが呟いた。

そっとその顔を見ると
心配で仕方ないといった表情で泣きそうにも見える。


「ねぇ、チェギョン。
チェギョンは皇子をどうして好きになったの?」


ガンヒョンがさらりと言うと
チェギョンの泣きそうな顔は一変した。


「へ???」


「あまり聞いたことなかったな、と思って」


数秒の沈黙のあと、チェギョンは人差し指を顎にあて
思い出すように目をくるくると動かした。


「・・・うーん、なんだろう。
ずっと自分勝手で冷たい人だと思ってたの。
けど、いつからかな・・・
とても孤独で、不器用だけど優しくて・・・
気が付いたら好きになってた」


あー恥ずかしい、と照れ笑いするチェギョンに
ガンヒョンは父の言葉を重ねた。

そして深呼吸をする。


「チェギョンは皇子が好きなんじゃなくて
イ・シンを好きになったのよね」


当たり前で単純なことなのに、と
ガンヒョンはチェギョンを抱きしめた。


「私、ちゃんと教師になれるかな?」


「ガンヒョン?」


「応用問題ばかりやって、簡単な問題で躓く・・・
一番やっちゃいけないパターンよね」


ゆっくりとチェギョンから離れたガンヒョンは
窓の外を指差した。


「すごい人の群れがこっちに向かってるけど
あれ、皇子なんじゃない?」


「どこどこ??」


一緒に窓から身を乗り出したチェギョンは
大群の中からシンを見つけて大きく手を振る。


「シンくーーーん!!」


その大きな声に一斉に周囲の目がこちらに注がれた。


はちきれそうな笑顔で手を振るチェギョンに
シンは一瞬ギョっとした表情を見せたものの
すぐに片手をあげてその声に答えた。













プロフィール

kaho

Author:kaho
韓国ドラマ「宮」が大好き。
皇太子夫妻の幸せを夢見て今日も妄想に全力投球!

本ブログは「宮〜Love in Palace」の非公式ファンページです。
あくまで2次小説であり、当然のことながら原作・関係者様とは一切関係がございません。また、その著作権その他を侵害する意思は全くございません。拙作ではありますが、文章の権利はすべてkahoが管理しております。文章・画像の転載、お知らせなしのリンクは固くお断りいたします。

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